脳の構造を模したニューロモーフィック・チップ
従来のテクノロジーで非常に高い計算能力を実現しようとしたときに、一番大きな問題となるのが熱の発生と電力であることは前回のコラムで紹介したとおりです。2020年に現在最速のコンピュータの30倍の能力を持ったエクサスケールのスーパー・コンピューターを今の技術で実現しようとすると、必要な電力は約7万キロワットとなり、賄うには、電気代だけでも年間相当な金額になります。
一方、人間の脳は20ワットで動くため、米国IBMではニューロンやシナプスといった人間の脳の神経回路を模したニューロモーフィック・チップの開発を2008年から米国国防総省(DARPA)の協力のもとに進めてきました。100万ニューロン・2億5600万個のシナプスを収めたチップを1枚のボードに16個乗せ、さらに複数のボードを30 cm 四方で体積が約2リットルの筐体に収めたプロトタイプは猫の脳程度の能力を持ち、物体認識、車線追従、文字認識、特定話者判別などができます。2020年には体積2リットル、1000ワットで人間の脳レベルの能力をもったプロトタイプを開発する予定ということです。
人間の脳の構造は計算する場所とデータが極めて近接し、必要な部分だけが活動を行うようにできているため、非常に省電力です。発火点から始まって、次々に情報が伝達され計算されるデータフローマシンのようなものではないでしょうか。
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